プロフィール
魲 万里絵 SUZUKI Marie
絵描き/ Painter
活動 2006 -
長野県長野市生まれ
一人称:わたし
三人称:they/ 身体の性別及び性別による役割の二元論に異を唱える
自認する性別と線引きした上で、社会的役割としての性別は必ずしもあるべきものにとらわれずにあって然るもの
わたしは孤高を追求することに重きを置き 人間を愛している
流浪するろくでなしの絵描き
最弱にして最強 臆病で大胆
芸術の潮流を牛耳る輩を唾棄するものと見做し
おもねることなく非暴力不服従を貫く
保身する卑怯はぶっ潰せ
“存在する表現”とは 抗うこと
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かつての嵐が去り 夜明けが次の朝を連れてきた
心穏やかな晴天の日も
風立ち荒れる心模様の日も
繰り返し 必ず
日は昇り 空を横切る
日が沈むと 夜の幕が上がる
月が巡りゆき ささめく星
夜を過ごす 夜が明ける
待ち焦がれた朝 幼子の目覚めのように眼を擦る
次に来る日は 必ず新しい始まり
新たに 次に向かうところ
つまり 次の出立点
日々の循環と集積が 一枚の布の上を運針し
縫い合わせ 仕立てた日常を纏う
描くこととは何か
点が集い 線の重なり
それだけであり それだけではなく
紙の上にあらわにする姿形は
かつての傷痕 これからの標
揃って声を上げる
今だ!
(次の出立点 アーティストステートメントより)
The old storm has passed The dawn has brought the next morning
On a sunny day even when, my heart is calm
On a stormy day even when, my heart is raging
Over and over Without failing
The sun rises And cross’s the sky
When the sun sets And the curtain of night rises
The moon is traveling The stars are whispering
I spend the night The dawn comes
In the long-awaited morning
I rub my eyes like a young child waking up
As the new day arrives It always brings a new beginning
The newly decided Destination
In other words Next starting point
The circulation and accumulation of life Moves like a needle on a piece of cloth
Sewing together pieces of time To create the life I live
What is the meaning of painting?
Dots gather Lines overlap
That all it is And that all that it isn’t
The image that appears on paper
Scars from the past Signs for the future
Voices cry out in unison
Now!
“Next starting point Artist statement”
English translation:Yoshihiro Watanabe“TONO“
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― 次々と立ち上がるひと連なりに 証の言葉「遠鳴りに聞け」
「 Me too」は自分にとってどこか他人事だ。
「女性たちの連帯」という言葉に苦々しさを感じていた。
わたしは醜い。女であっても女とされたことはない。尊厳を傷つけられた女性が抱えざるを得ない痛みを分かったつもりにはなれない。お前は違うと蚊帳の外に追いやられる。
例えば「美」とはなんだろう。
広くもてはやされる美しさがうつくしいとされるなら、わたし自身とわたしの描く絵は美しくはない。
「これぞ美とされる美しさ」と「一般的であること」のどちらにも困惑させられてきた。
必ずしも他人と共有できない観念のはずなのに、自分で決めたわけではない基準に到達出来ないことに負い目を覚え、時に他人からも指を指される。
違和感を良しとせず、声を上げ続ける女性たちの証の列に加わることはどうしても場違いで、誰かが決めた美の基準に今も流され続けている。証する列が凛とした平和に満ちているとしても、そのままを受け止めきれない。
ずっと知りたかったことが見え隠れする。証の声が幾重にも響き渡る。
その遠鳴りに聞け。
魲万里絵展「遠鳴りに聞け」アーティスト・ステートメントより
―A series of words flow one after another These words of testimony “HEAR THE SOUND FROM AFAR”
“Me too” feels like someone else's problem to me.
I have been feeling bitter about the phrase "women's solidarity."
I'm ugly. Even though I am a woman, I have never been treated as a woman. I cannot pretend to understand the pain that women who have had their dignity violated are forced to endure. They say “You are different .” and I get kicked out.
For example, what is the meaning of "beauty"?
If beauty norm that is widely touted is considered beautiful, then myself, and my art, are not beautiful.
I have been perplexed by both “beauty that is considered beautiful” and “commonness.”
Although it is not necessarily a thought that I can share with others, I feel guilty for not being able to reach a standard that I did not set for myself, and sometimes others point fingers at me.
It feels completely out of place to join the line of women who continue to raise their voices, despite their discomfort, and I am still being swayed by someone else's standards of beauty.
Even if they come to me peacefully, I cannot accept it as it is.
Things I've always wanted to know are coming to light. The voices of unison echoing my testimony over and over again.
“HEAR THE SOUND FROM AFAR” (August 2023)
English translation:Yoshihiro Watanabe“TONO”
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わたし自身も至らぬひとりの人間だ。世の中の同調圧力に逆らえない時も、絶え
ず変化する空模様のようにある。
40歳を過ぎた中年で、独身で、地方住まいで、精神障害を患っていて、
ならば、自分の身をわきまえろと、あるともないとも言える空気を自発的に読ん
でしまう日もある。
あるともないとも言えるのならば、砂時計をひっくり返すみたいに逆転させてし
まえ。心の空模様が晴れている時ならば、雨雲から逃れるように走り出せる。
とはいえ、一旦駆けだしても雨雲が追いつくこともある。雨もまた浮き足だった
心を落ち着かせるために必要なのだ。
窓ガラスの向こうに触られぬ雨粒を指でなぞる。
魲万里絵展-「わたし」たらしめる、わたしの色。御礼の言葉より
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「わたし」たらしめる。わたしの色。もの。かたち。
自信の無さ。弱さ。虚しさ。
傷。自分で傷をつける。かつてつけられた傷。誰かをひどく傷つける。
訝しさ。信じてる。信じてない。信じ切れてない。傲慢。卑屈。欲望。
隠す。隠してるつもり。知られたくない。秘密。怯えてる。
神か鬼か。手に負えない。飼い馴らせない何か。いるけど見えない。
どうにかなると思う。このままでは嫌だと焦る。何もできないと嘆く。
独りでは生きられない。一人でいたい。並んでるいる中のひとり。
大事にしたい。大事にされたい。蔑ろにしたくない。裏側に隠れて涙する。
静かなところが好き。音楽が流れてるところが好き。
窓の外を眺めるのが好き。時々どこかに行く。
わたしたらしめるものたちを持て。
日々を生きてく。いつか毎日では無くなる。必ず来る日。手を振る日。
今日一日を過ごせた事に感謝する。明日も続くことを祈る。
ひとり登る。
魲万里絵展「わたし」たらしめる、わたしの色。に寄せた詩
故郷と言えば山である。
子どもの時遠足で登った山の記憶。同じクラスの悪童共が仕掛ける〈余計な戯
れ〉に都度悔し涙し、鼻水と汗まみれで苦しい上り坂を行く。わたしは学校で教
師から強情だと言われることが暫しある子どもだった。
あと少しで頂上のところまで来た。木立の切れ目から、足下に箱庭みたいな町が
広がる。家々を手でつまみ上げ自由に入れ替えることが出来そう。その中に自分
も住んでいるのに、まるで知らない町に見えた。
日常の景色として山は在る。博物館のプラネタリウムではドーム型の天井の下
端に山がぐるりと映る。
両親の代から長野市に住み、ここが故郷という感覚がある一方で少し引いて眺め
ている。心にいつも浮かぶのは、知っているのに知らない顔をした箱庭の町、遠
くの山並み。
過去をなかったことに出来ない。傷つけられた痛みだけではない。傷つけた苦み
もずっとなぞり続けていく。
絵を描く日々はまるで山登りだ。起伏ある地形の上を這ってひとりゆく。
魲万里絵展-「わたし」たらしめる、わたしの色。作家挨拶より
野に住む生き物
これより先に入らば “害獣”
かしこより湧き出で 運ばれ
偶々 流れ着いたところ
大勢の中とひとつ 烏合の衆
コミュニティー
こいこい 招き合い
他所から来たもの
異分子
ひとりひとり違う人
束で立ち向かう くんずほぐれつ
わたし 嫌よ 逆回転
個展「いぶつ回帰」アーティスト・ステートメントより
こどもの頃、言葉にならずとも感じていたこと。
虐げる者がいて、虐げられ搾取され続ける者が存在する。
それぞれの不都合から目を背け、諍いが絶えない大人の男と女がいる。
女性性を女々しく汚らしいと蔑み否定する連中がいる。
居心地の悪い円環の中を抜け出すことが出来ずにいた。
しばし耐え切れず感情が爆発し、都度後悔と混乱に苛まれた。
ずっと自分を押さえつけていたものは何だ。
逃げ出せないと思っていたのは何故だ。
何故女が汚い存在とされているのか。そう思わされてきたのは一体何故。
最初の動機はとても個人的なこと。ただ、好きだと思った人の姿を自分の記憶に留めるために描きたいと思った。
身体と心に負い目を抱え込む自分。
気持ちを外側に表す方法はそれしかないと思い、地元の画材店で手に入る一番大きいスケッチブックに吐き出した。
描き上げた絵の中に留めたい人。その足元に跪いている全裸の女が現れる。
跪かれている人が聖なる存在とすると、この女は穢れの存在。一番見たくないと目を向けないようにしていた不都合のシンボル。嫌いで好き。愛している。憎んでいる。
いっそ、この女を描いていきたいと思った。
描くと落ち着くと言うと、奇妙に思われるらしい。
自分の裡に確実に存在しているのに、姿なりが全く分からない何かのことが少しずつ分かるようになってきた。それは不都合と矛盾だらけで必要不可欠な存在。知るほどに発見が増えていく。頭を覆う靄が抜け、見えなかったものに気づく。
まだまだだ。まだ知り尽くせてはいない。何年経とうと今も自分のために描いている。
生きている中の傷口に、隣りで語りかけるように描いていきたい。
魲万里絵 ポートフォリオ2023 アーティスト・ステートメントより
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〈おもな受賞歴〉
2014 第19回信毎選賞受賞
〈メディア出演〉
2018 人知れず表現し続ける者たちⅡ(Eテレ)
2020 no art,no life「魲 万里絵」(Eテレ)
2021 no art,no life「令和三年、表現者たちの幻想曲」(BSプレミアム他)
〈コレクション〉
滋賀県立美術館